2015年7月29日水曜日
レンジフード
日経ケンプラッツにレンジフードからの熱損失についての記事があったので紹介します。
換気による熱損失としては24時間換気による損失が挙げられます。24時間換気の換気量は100m3~150m3/h(住宅の規模や換気ルートによって変動)です。これに対し大半のレンジフードの「強運転」の換気量はなんと400~600m3/hにもなります。
ケンプラッツ記事では24時間換気150m3のときの熱損失量を計算しています。それが次式です。
内外1℃差あたりの換気による熱損失量=0.34(定数)×150m3=51W/K
この値を床面積で割ると「51÷120=0.425」となり、これが熱損失係数(Q値)のうちの換気による熱損失分ということになります。例えばQ値2.7の建物だとすると、「2.7-0.425=2.275」が換気以外の熱損失分ということです。
私の記憶だとQ値2.7の住宅では換気による熱損失量は15%程度なので大よそ数字が合います。
ここからは私独自の計算です。レンジフードの使用時間2時間、換気量400m3として熱損失量を算出してみましょう。
内外1℃差あたりの換気による熱損失量=0.34(定数)×400m3×2h=272W/K・日
内外温度差15℃という冬季には、272W/K・日×15℃=4080W/日
エアコンの実効COPを3、電気の単価を25円/kWhとすると、4080/3×25×1/1000=34円/日のロスとなります。一か月30日とすると、34円/日×30日=1020円、一か月1020円のロスということになります。暖房期間と夏期の冷房負荷増も加味すると年間5000円の冷暖房ロスということになります。
このように大量の換気量が必要なレンジフードは、冷暖房ロスだけでなく給気口からの冷気流入による不快感やドアの開け閉めの不具合などの問題も生じています。これらの対策としてはまず第一に同時給排タイプのレンジフードの選定が考えられます。同時給排気型のレンジフードを使っても熱量としては同じ量が逃げてしまいますが、大半は調理の熱で相殺することができます。少なくともリビングやダイニングの足元を冷気が強烈な勢いで通ることはほとんどなくなります。排気専用レンジフードから同時給排タイプのレンジフードへの変更で少々コストアップは必要ですが実質的には3万円程度のコストUPで済むので冷気流入による不快感を防ぐためにも有効です。
もうひとつ対策として考えられるのが循環型レンジフードです。富士工業から発売されており、2年ほど前のブログで紹介したこともあります。IH専用で、かつフィルターを何種類も交換しなければならないという手間はありますが、節約できる冷暖房費とより上質な室内環境が手に入ることを考えると、これもひとつの選択肢になると思います。こちらは排気専用レンジフードから同時給排気タイプのレンジフードへの交換は実質的に5万程のコストUPです。機器台が7万円ほどUPしますが排気ダクトとベントキャップが減少するので差し引きした金額です。
どうでしょうか、レンジフードの見落としがちな選定項目ですよね。
寒冷地~比較的温暖な地域(冬の最低気温が5℃以下になるような地域)にお住いの方、事業者は同時給排タイプのレンジフードを標準採用することを強くお勧めします。
元記事:日経ケンプラッツ「レンジフードで月4000円の損失
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/column/20150727/707130/?P=1
【住環境性能+Design】 森建築設計
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