2015年6月27日土曜日

衣替えする家


6月に入り冬ものと夏物の洋服を入れ替え、衣替えをした方も多いことでしょう。日本には四季があり夏は高温多湿で半袖でも暑い日々が続き、冬は氷点下になり外水道が凍る日もあります。洋服を衣替えするように、住宅でも夏仕様と冬仕様があってもいいと思いませんか?

私が目指しているのは自然エネルギーを有効活用した、四季を通して快適な住宅です。氷点下になるような真冬の気温では高断熱高気密の性能が快適性や健康性、さらに省エネ性に大きく貢献します。ですが30度を超える真夏の季節では真冬程の断熱気密性能は必要ありません。逆に高断熱とすることで真夏の冷房費が増加する結果となるのです。春と秋の中間期は窓を開放して過ごすので通風性能の方が重要です。通風と言えば夏の冷房費を削減するためには換気回数20回以上の通風性能を持たせることで快適性が向上するだけでなく冷房費を大きく削減できるのです

このように四季のある日本では四季それぞれに必要な断熱気密性能と通風性能があるのです。

次に快適性について考えてみましょう。高断熱高気密の住環境性能は基本的に冬に必要な性能です。部屋ごとの室温差が小さくなり、また上下温度差も小さくなります。さらに周壁表面温度が上がり快適性と健康性が大きく向上します。北海道や東北など北欧に気候が近い地域ならば冬を重視した高断熱高気密住宅でいいでしょう。では東京や神奈川などの比較的温暖な地域よりも南の地域ではどうでしょうか?

温暖な地域では春~夏~秋の3シーズンは窓を開け開放的な設えのなかで得られる快適性を追求してきた文化があります。単に昔に倣えといっているのではありません。昨今の温暖化により100年で平均気温は3℃上昇し外気温が35℃を超える日も多くなりました。ヒートアイランド現象によりる屋外地表面や建築物外壁の温度も上昇しています。そして真冬には氷点下になるというように季節により気温が大きく変動する厳しい四季があるのです。

春、夏、秋、冬と気候が大きく変わるなかで私が目指しているのは、北欧系の単に高断熱化した無味均一な快適さではなく、自然と応答する中で得られる「清々しさ」や「爽やかさ」といった人間の感覚に感応する快適さの質です。高断熱高気密化した閉鎖的な住宅と、日本人の精神に根付いた開放的な住宅の、両者の年間一次エネルギー消費量が等しければ省エネ性能は同等です。冬は高断熱高気密で閉鎖的で、春~夏~秋は開放的な設えとなる住宅を取捨選択型と言います。単に閉鎖的な住宅を目指すのか、取捨選択型の住宅を目指すのかで完成する住宅様式は大きく変わります。

閉鎖的な住宅と比べると取捨選択型の住宅は環境性能計算が数倍難しくなりますが、私は省エネ性能は確保しながら自然と応答する中で得られる情緒的な快適さのある住宅を提案しています。四季それぞれに必要な性能に合わせて衣替えする家、日本の気候風土にふさわしいパッシブデザインです。

0 件のコメント:

コメントを投稿